対談シリーズ 翻訳家 上野圭一 先生(その2)

2年ぶりに上野先生にお話をお伺いに行ってまいりました。
c4_4_pic01民主党政権となり、鳩山総理が統合医療推進プロジェクトを立ち上げ、これから日本の医療のあり方も否応無しに変わって行くだろう。 それは、どのような流れに?我が自然手技療法学院では、「人はなぜ治るのか?」「癒す心、癒す心」(共に、アンドルー・ワイル著/上野圭一訳)は入学時の課題図書として読破していただき、「治癒力とは何か?」とのレポートを提出していただく事になっています。その、日本の統合医療、ホリスティック医療などの潮流を作られてきた上野先生から、直にお話を伺うことが出来るという事は、私達代替療法に携わる者にとっては、とても恵まれている事です。
今回は、これからの統合医療の流れ以外にも、上野先生の友人であるアンドルー・ワイル博士の臨床の話、オステオパスのフルフォード博士の話、変成意識の事など、たくさんのお話がありますので、どうぞお楽しみください。

上野 圭一先生
翻訳家
日本ホリスティック医学協会副会長
CAMU Net
(代替医療利用者ネットワーク)副代表


鈴木:たいへんご無沙汰しております。前回お伺いさせていただいてから早くも2年近くが経っております。その節は本当にありがとうございました。
今日お伺いしてまずお聞きしたかったのが、映画『ガイアシンフォニー第七番』に出演されているアンドルー・ワイル博士が統合医療、自然療法というものを最近ではどのように考えていらっしゃるのかというのが一つ。もう一つが、鳩山首相が統合医療の推進のプロジェクトというものを立ち上げて、これから日本も代替医療に関して変化していくだろうと思うのですが、私はやはりアメリカをお手本にして行かざるを得ないだろうと思っています。その辺りから上野先生のお考えをお聞かせいただけますか。

上野:日本の場合はね。アメリカとヨーロッパとはずいぶん違うし、もともと統合医療と言葉ではいっても、まだ定まったスタイルというか、姿があるわけではないんですよね。形はまだまだ試行錯誤の段階で。まあ、それでいいわけですけれどもね。ワイルさんから、今まで世界中から三十代、四十代の若手の医者を中心に500人近い人が学んでいるんですよね。で、それぞれの国に帰って、もしくはアメリカ国内の地域に帰って、自分の住んでいるところを自分が診療するにふさわしい形にしろ、と教えているんですよね。マニュアルがあって、それも画一的にあるわけではなくて。日本にいるワイルさんの弟子達10人もちょうどいいことにみんなばらばらに散っているんですよ。関東にもいれば、関西や中部にもいる。その人たちがその地域で一番ふさわしい、自分がやりたいことをやっているという、そういうものでね。十人十色なんです。面白いです、すごく。

鈴木:ワイル博士が考えている統合医療の基本的な理念というか、概念というか、「ここをふまえてゆけばあとは自由」というものがあるのでしょうか。

上野:そうですね。三つぐらいあるのですけれどもね。一つはやっぱり、ワイルさんがもう何十年も、最初から言い続けている「病理志向じゃなくて治癒志向」ですね。つまり今のお医者さんは自然治癒力というものを、ほとんど認めていない。というか学校で教わってない。なぜ教えてないかというと、あまりにも複雑で、いわば複雑系の最たるものですから。

鈴木:それは、治癒系というものでしょうか…

上野:そうですね。治癒力を支えているのが治癒系。治癒系についてもほとんど教えていない。教えることが出来る人がいない。科学の目はそこまで行き届いてないわけですよ。治癒のうち医学校では怪我の創傷治癒というのはもちろん教えているんですけど、それは目で見えるし、顕微鏡で見える現象ですから、生理現象だからそれは教えるんですよね。つまり、血小板がどうのとかですね、白血球がどうのというプロセスによって傷が治るっていうのは当然教える。でも、それは治癒全体の中のほんの一部ですよね。目に見えるそれは外側の、外部の現象であって、内部にも同じ事が起こっているんだけど、目に見えないから教えてないし、ましてやその、人間の心との相関関係とか、あるいはもっと霊的なものとかっていう、ほど遠いレベルのものもあるわけじゃないですか。人間の全体からみると、ほんの小さなところしかまだ教えていない。だけども患者さんというのは全体としてくるわけだから、患者さんが治るということを、まるごと見る事によってその人が治ってゆくプロセスをサポートする、というのがまず統合医療の大原則ですよね。もともと治る力があるんだから。医者が治すのではなくて、医者が壊れた部品を修理したり交換して治すのではなくて、その人にもともと与えられている命の力、自然治癒力といわれている生命力、こういったものが、何らかの理由でレベルが落ちているからこそ、発病している。色んな症状が起こっている。だから、まず、そういう力があなたにあるんだということを自覚してもらって、なぜそのレベルが落ちているのかということを、お互いに医者と患者の話し合いの中で気づいてゆく。悩みがあるとか、生活習慣がむちゃくちゃだったとか、色々あるじゃないですか、その病気に至るプロセスっていうのは。その人固有のそうなったいきさつみたいなものを、自分で探り出してゆく為の援助をするということですね。その結果、そうか自分にはそういう力があったんだと。治らない理由があるんだと。治りたくても、治りたくない、それをブロックするものが心の、あるいは体のどこかにそれがあるんだと。ブロックするものを取り除くにはどうしたらいいか。そういうような考え方で、もともと病気で壊れたから治してください、といってきて、車の修理にくるような感じで医者のところに来た人に、そうじゃないんだと。あなたは車じゃないんだ。命もあって心も魂もある人間なんだから、本来治るようにできている。でもどっかがおかしい。どっかが押さえつけられている、それを探しましょう、みたいな形でいく。色んなプロセスがあると思います。まず第一に、その、人間をいわば今の医学が見ているような精密な分子のメカニズムであるというふうには捉えないで、もともと自然から与えられた非常にすさまじい治癒力を秘めた存在であるんだというところからスタートするというのが第一番なんですよね。それをワイルは「病理志向から治癒志向へ」と言っているんだけどね。今までの西洋医学は病理志向。病理学は非常にすばらしく発達している。病理の実態の研究をしている。それはすごく大事だと思うんですけど、一方で治癒学というものがおろそかになっている。そっちのほうへシフトしてゆくというのが、一番の大きな違いといえば、違い。

鈴木:私達は「自然手技療法学院/インテグレイテッド・ナチュロパシー」という学校を運営しているんですが、そこでは代替療法というものの本質は、鍼灸からハーブからマッサージなど色々なものがあるけれども、それらが共通して行っているのが「治癒力を高めてゆく」ということなんだよと。では治癒力というものは何なんだろうか? 具体的に治癒力とは血液なんだよ、と教えています。血液は食べ物によって作られ、想念によって様々な物質が放出され、呼吸や動く事によって循環が引き起こされます。また人間は環境により支配される動物でもある。よって治癒力を高いレベルで発動させて行く為には、人間の根源的な5つの営みである「食・息・動・想・環境」を見つめ直し、改善して行く事が必要なんだよと教えております。

上野:そうなんですよね。医学が現代医学のような形になる前までは世界中のあらゆるお医者さん的な存在の人、ヒーラーのような人たちはそれをやってきたと思うんですよ。そこに気がついて、なんらかの形でそういう指導もしてきただろうし、自分がその手本も示してきただろうし。もともとそれは基本にあったと思うんですよね。それがここ数百年で失われてきた。そのおかげでこういう文明ができたんだけども、失われてくものも大きいということの一つですよね。ワイルさんたちはそれをもう一回取り戻そうとしている。統合医療は何を統合するのかというと、西洋医学と代替療法を統合するって言っていますよ。日本の場合には、鳩山さんたちの場合には国会の議論を見ても、医者の議員は何人もいて、おおむね推進するようなことを言ってますけれど、国会での発言を聞いていると「統合医療すなわち東洋医学と西洋医学の統合」と言っているんですね。

鈴木:根本がなにもわかってないんですよね。

上野:全然わかってないの。ただお題目で。西洋でやっているから。実態は西洋医学と東洋医学の統合なんだという程度の認識しか医者はもってないわけ。東洋医学は今まで自分たちが馬鹿にしてきたけど、馬鹿にするものでもなさそうだな…、という程度の認識で統合しちゃぇみたいな、すごくアバウトな発想なんですよね。東洋医学はもちろんいいんだけれども、東洋医学は一つのシステムですから。中国の伝統の上にのっかったシステムですからそれに統合ということ言っているわけじゃ、全然ないですよね。

鈴木:東洋医学と西洋医学の融合はかつてトライ&エラーがありましたね。思想からシステム迄、全く違う医療体系ですものね。

上野:だからそのへんがね…。非常に道は遠いとおもいますね。

鈴木:そうですね。

上野:僕はワイル・チルドレンの10人に期待しているんですよね。彼ら、彼女達がそこで学んできた経験と、毎日診ている患者さんとの間に起こっている経験をプラスしていって独自のものを作って。それが10人集まってみんな違うから、お互いに補いあえるところもあるでしょうし、議論もあるでしょうし。そうやっていくと、日本的な統合医療というのが将来できてくる。それをアメリカ的なものやヨーロッパ的なものと議論をしていって、それを積み重ねていって、その遠い先に完成形というのもがあるのかもしれないけれど、まだまだそれを論じる段階ではないと思います。まだ西洋医学の欠陥に伴う悪しき影響からいかに自分の意識をクリアにするか、というその辺の教育を今やっているわけですよね。

鈴木:私は再生医療や人工臓器なども含めて西洋医学は近い将来素晴しい発展をして行くだろうと思っています。そこには夢も希望もあるし、ある面でとても崇高なものとして進んでゆくだろうと思うんです。しかし同時にもう一つの潮流として、「自然治癒力/治癒系」というものを踏まえた医学というものが活発になってくると思っています。
しかしそこには、医師を始めそこに従事する方の最大のネックになる経済的負担というか格差というか、そこの部分が大きなポイントになっていくだろうと思うんですね。
一人のクライアントを診てその対価として報酬を頂く。これがあまりにも、例えば3分診療と言われている現行の西洋医学の医師達の報酬とかけ離れてゆく。
前回お話をお伺いしたときに、上野さんの言葉ですごく心に残っている「健康というものは時代というものと、いつも密接に考えていかなければ見えてこないんだ」というフレーズがその後、私には大きくひっかかっていて、抽象的になりがちな「健康」というものを現実面に引き戻して考えさせてくれます。
そして、これだけドルが危うくなってきて借金大国アメリカがもう瀕死の状態になっている。資本主義自体が危うくなっている。世界中でスーパーインフレーションがおこると言われている中だからこそ、統合医療というのはこれから行けるんじゃぁないかと、僕は逆説的に希望を持てるんですよね~。

上野:というか、唯一の道でしょうね。生き残ってゆく為の。必然的なね。まあ今日たまたまオバマが下院を通過させましたが、アメリカの医療制度の改革ですね。これは民主党の悲願でもあったわけですね。今までに何度やってもうまく行かなくて、ようやくオバマの力でぎりぎりで通って、何十年来の悲願を達成させたわけです。でもオバマが狙っていることっていうのは言ってみたら、日本の医療制度みたいなもんなんですよね。国民皆保険制度に近い状態に持って行きたい。アメリカっていうのは医療に限らず小さな政府というのを目指してきたんです。できるだけ自己責任によって社会を動かしてゆくと。ヨーロッパみたいに大きな政府で、非常に高い税金を取って、その高負担のかわりに高福祉。晩年まで国が面倒を見る。生活の心配はいらないという社会を作るのか、あるいはアメリカみたいに全て自己責任で、力のあるやつはやっていくし、だめなやつは落ちこぼれるという非常に厳しい社会になってゆくのか。そういう中で国民の六人に一人は保険に入れないという悲惨な状態になってきて、なんとかして公平な医療保険を、と言ってきたわけですよね。そうなると、これから医療保険制度はなんとかできたとしても、実際に誰が、どういうドクターがどういう診療をするのかというのは、全くこれからの話ですよね。今まで通りの医療のやり方をもって、保険制度だけかえても同じ事になっちゃう。製薬会社、保険会社がものすごく大きな力を持っていますから。そういう人たちの言いなりになっては、今のあり方は全く変わらないですよね。だからオバマさんは、統合医療的な医師をブレーンに置いて、医療の内容もかえようとしているんですよね。医療ブレーンが何人かいてワイルもその一人なんですよ。で、上院でワイルさんが証言なんかしたりしてますけど、ワイルはもっぱら教育のことを言ってますね。つまり統合医療といっても、彼の持論ですけれども、一朝一夕にできるものではないから、アメリカ人の意識を変えなくちゃいけない。幼稚園からメディカルスクール、医学部の学生まで全部に統合医療の教育をしなければならない、と提案しているんですよね。すごい時間かかるけど。でも正論だと思いますね。つまり、人間とは何かとか、人間の体とは何か、心とは何か、という最もベーシックなものを子供の頃からホリスティックな教育をしようということですね。

鈴木:それは新たな道徳の構築ということになってきますね。

上野:そうですね。道徳と倫理も当然含まれる。もともと「医」というものはそういうものですよね。医学があって、医術があって、医道(倫理、道徳)がある。この三つがワンセットになっているのが「医」の世界であって、ずーとそれで何千年もきたわけです。これもまた、ここ二百年ぐらいでそれが途切れてしまって。医学、というものが学問として突出してしまって。医術は国家的な資格のない人が勝手にやっているものとして排除してしまって、倫理のほうは非常にお粗末になってしまって。倫理性を問われないままになってしまって。非常にゆがんだ形になった、この三つをもう一度取り戻そうというのがワイルさん達がやっている統合医療のもう一つの目標でもあるんですよね。(雑音で聞き取れず)
医術、医学、医道という昔から言われていた三本柱が、医者になる道のりなんですね。チベット医学なんて今でもそうですよね。チベット仏教を勉強し、チベット医学を勉強し、一人の人が両方やらなくてはならない。もともとそうだったんですよ。専門分化して、仏教は仏教、医者は医者の専門家と別れてしまった。

鈴木:日本でも一人いましたよね。チベットの僧侶になって、占星術から薬草学やなんかを学んだ…。

上野:そういう人が出てきていることはすごく心強いですよね。チベット仏教だけじゃなくて、在来の日本の仏教の坊さんの中からも医学を志して、医者になっている人もいるし。ばらばらになったものがもう一回前のようにつながりを取り戻して、連帯性を回帰してゆくという動きが明らかに起こっているんですよね。西洋医学だけじゃなくて。

鈴木:なるほどそうですよね~。ここ二、三百年で世の中本当に変わってしまった訳ですが特にここ一世代での変革というのが急激すぎますね。やはりこれも経済に結びついてしまいますが、生活のライフスタイルっていうものが、よりよくなりたい! お金が全てだ! っていうところが行き過ぎてしまって。貨幣価値でも金が重要視されていたのが、今度は紙幣だと。紙幣になるとこれは国がいくらでも刷る事ができてしまう。アメリカにしても、勝手にお札を刷りまくって自ら借金大国に陥っている。ここの辺りが根本的なのかな…。

上野:そうでしょうね。北朝鮮なんかもそうですもんね。めちゃくちゃですよ。例えば、重い病気になって、いよいよ命に限りが見えてきたときに、誰しもが本当に大事だったものは何かに気づくわけですよね。お金をがんがん稼いできた人も、貧乏人も同じく、大事なものは何だったのかに気づく訳じゃないですか。そこに戻ってゆくべきだと思うしね。

鈴木:私達の学院で先日アーユルヴェーダのセミナーを行ったんですが、これは本当にすごいなと思った一言がありましてね、私が「食」について色々とああでもない、こうでもないとうんちくを言うんですが、それをたった一言「食事はおいしくなければいけない」の一言で終わっちゃったんですね。さすがWHOが代替医療の母と認めた医学だなと思いました。

ワイル博士の診療というのは、どのような診療をなされているんですか?

上野:僕もね、こないだ撮影の時に始めて見たんだけどね。何年か前、ずいぶん前に自宅で診療してたときは、自宅に泊まってたもので見てたんですけど、アリゾナ大学の統合医療課というのを初めて見たんです。たっぷり時間かけてね。やっぱり患者に対して、あなたは本来治る力を持っているんだ、ということをわかってもらうための問診にけっこう時間をかけてましたね。それで、今、その患者が何を苦痛に思っているのか、何を不安に思っているのかを細かくインタビューしてましたね。
(上野さんはガイアシンフォニー第七番に出演されたワイル博士の友人としてご同行されていた)

鈴木:対話医療ということですね。

上野:そうですね。まず対話。そして面白いのは、鎮静剤、精神安定剤みたいなものをほしがる人が多いんだけど、そういうものが欲しいと言っている人にですね、そんなものは飲まなくていいんだと、じゃあ呼吸法をやってみましょう、と実際に診療の途中で呼吸法を教えて、自分もやって、鎮静する呼吸法を10分~15分くらい教えてたかな。それだけやってもね、明らかに顔色が良くなる。目の輝きが増してくるし。えー!みたいな感じで患者さんが驚くわけですよ。呼吸法だけでこんなに楽になるんですか?って。それは単にお題目として言うんじゃなくて、実際にそこでやってみせて、やりましょう、と。今晩からちゃんとやってください、と一種の処方として与えているわけですよ。そのシーンも映画に映ってますけどね。

鈴木:それはすごい楽しみですね。でもそれはこれからの医療のあり方としておおいに勉強になりますね。

上野:うん。ワイルはずいぶん本にそういう事を書いているけど、一人一人の患者にやっているという姿を初めてみて、なかなかいいもんだな、と思って。お医者さんが見たら驚きますよ。

鈴木:そうでしょうね。本当にそうでしょうね。
(同伴の方に)君たちもくる前に色々本を読んで、色々聞きたい事とかあるんじゃないかい?

上野:何を読んだんですか?

山下:『ヒーリング・ボディ』です。特に先生が、アメリカにいかれて、目に見えない現象に興味を持たれたきっかけになったという、LSDを試されて、その時友人の周りにオーラが見えたという経験…。地下に流れている水の流れを感じたというのが、すごいな、と思っいました。そういった感覚というのは、なんていうか非常に衝撃を受けました。

上野:動物とか、野生動物なんかはそれを感じながら生きているわけじゃないですか。そこに意識的に戻るんだと思うね。ネイティブの人たちなんかはそういう体験を通じて世界を見ている。そういう意味では貴重な体験だった。

鈴木:こういうのって、いいのか悪いのかわからないですけれども、成長期において、ネイティブの方達が旅にでる儀式ってありますよね? イニシエーションみたいな。ああいうのっていいよね。でも私達も一度LSDを体験すると、まったく価値観かわりますよね。なぜあれを合法化しないんだろうね(笑)

上野:良いガイドがいればね(笑)

山下:マジックマッシュルームも方法の一つだときいて、一回試したことあったんですが、木が非常にダイナミックに見える…これは木の生命力がビジュアル化して見えたのかもしれません。

上野:よかったじゃないですか(笑)

鈴木:今やっている「アバター」で、顔にくまどりじゃないけどペインティングみたいなのがしてあって、あれは経絡なんですか?っていう質問をうけて。多分そうなんですよね。歌舞伎のくまどりっていうのもそうですよね。怒ったメイクをすると、こういう血色で出てくる。それを隈取っている気のラインなんですよ。昔の人達は見えているはずだと思います。私達でも可能だとは思うんですが、しかし色々なメソッドで変性意識に持って行くっていうのはあまりにも無理がありますよね。技法的に難しすぎるというか。

上野:うーん、でも、可能性としてはやっぱり、手放すべきではないと思いますね。それはちゃんと持っていて、いざというときに使うようなものとして持っていたほうがいいと思うね。

鈴木:そうですよね~。難しいけど、断食/ファスティングというものを加えるとけっこう純化していきやすくなってきたりしますね。

上野:断食もまさにそうですよね。

山下:先生の本で、奥様が亡くなったというメッセージが聞こえたという

上野:そうそうそう。あれもね、信じられない。全く予想もしなかったことなんだけど、後で考えると、そういう事ってシンクロニシティって色んな人がいってるけど、あれがそうだったのか、と。そんな時にそんな声が聞こえるはずないもの。やっぱり時空を超えた情報の伝達システムっていうのはあるんだって確信したんですけどもね。

鈴木:そこが知りたいんです、時空というものがですね。一生懸命勉強するんですけれども、わからないですね。

上野:わからないですねえ~。

宮崎:潜在意識の中のその…。

上野:うーん。潜在意識でもあるしね。

山下:その時の奥様が亡くなったというメッセージを隣室のご友人の方も気づかれてたという、あれなんですよね。それは、すごいな。

上野:そうなんですよ。あるんですよ、本当に。言葉をかけきれなくて…。相手がどういう状態なのか、あっとわかっちゃう。まあ、仏教の修行の中にそういうの沢山ありますから。

鈴木:例えば、千里眼じゃないですけれど、いろいろな遠くを視覚化として見るということや、自分と心が通っている人を現場に行かせて、テレパシーの様なコミュニケーションでその現場をかいま見るとか、様々な記述が多数ありますよね。

上野:きっとできたんだよね。それは間違いないですよ。

山下:先生はそのオーラを見られたということなんですけれども、それが、そのようするに教典の、図と似てたという…。

上野:似てたなんてもんじゃないですよ。

山下:その、中国の経絡図など、色んな気の流れに見えたと、表現の違いがあるだけで、そういう風に見えたということなですよね。

上野:うん。それは、ちゃんと実験なんかすれば、かなりの部分で出てくると思いますね。LSDをやった人がみんなそうなるというわけではないですけどね。
神田にパルクっていうアジア太平洋資料センターがあるんですけど、自由学校というのをやってて沢山の教室があるんだけど、そこで麻の教室っていうのがあって、麻の生活の中の応用法とか歴史とか、色んな専門家が話すんだけど、僕は「代替療法としての麻」という話をすることになっててね、それはマリファナのことなんだけどね。

鈴木:そうですよね。例えば「とうあさのぎ」とか、麻のつくものはみんなそっち系ですよね。

上野:そう。そういうのもみんな、今の若い人は興味持っているしね。

鈴木:それらは吸い込む化学物質として脳に作用する、そして変性意識をかいま見る...。今電脳というものがソレ系に一番近くなってきますよね。インパルスによって脳のある部分が刺激される、ピカチュウで子供が倒れちゃったのと一緒で、あれを上手い具合に昇華していくと同じような作用が出てくるかもしれませんよね。

上野:ありますよね。モンローの体外離脱7−7。

鈴木:モンロー研究所ですね。

上野:そうそう、モンロー研究所がやってる。僕もやったことがあるけど、ヘミシンク。

鈴木:先生は見られました?

上野:あれだけではだめでした。

山下:先生はあの、ご自身の原人というのを外から見られたという…。どういった…

上野;そういう時に出てくるイメージっていうのは、多分に何かこう、過去に見た記憶によって再構成されることがあると思うんですけれども、僕が見たのは割合、子供の頃に教科書とか歴史の本とかで見た北京原人の図というか。多分にそれに影響されていると思いました。

山下:それを上から見られてるような感じなんですか?

上野:あれは不思議ですね。背がすごい高くなったり。視点がどこにでも変わる。

鈴木:それは変性意識下でですか?

上野:そうですね。今は、インタラクティブなインスタレーションみたいなのよくあるじゃないですか。ゲームの中に入ったりみたいな。あれと同じことですよね。あれが勝手にできちゃうという。

鈴木:退行催眠というのを二度程うけたことがあるんですけど、自分では絶対に催眠術にはかからない自信があったんですが、やられてみると白目を出しながらかなり深く入っちゃってたらしくて、戻ってきた時はすごく強い脱力感と幸福感に満たされていて、号泣してしまった体験があるんですね。そのときの意識っていうのが面白くて、ちゃんとした意識はあるけれども次から次にイメージが展開してゆくんですね。ああ、催眠というのはこういう状態だったのか、と。僕のイメージしていたものとは全く違う状態でした。

上野:自分の意識が完全になくなって操られるわけじゃなくてね。それを意識している目がありながら、だぶって同時に別の意識が…

鈴木:そうですね。次から次へと展開してゆく感じでしたね。

上野:だいたい普段だって、起きているときでも寝ているときでも、夢の時はもちろんのこと、内部の思考っていうのはほとんど脈絡なく、何かイメージしたりとんでもないものだったり。もともとそういうものなんですよね。そんなきちっとした、整合性のあるもんじゃないよね。

鈴木:胡蝶の夢っていうのは一つありますよね。電脳やヘミシンクもそうでしょうけども、チベット仏教なんかでいうと倍音唱名、頭骸の中に響かせるというか、あれはけっこうきますね。

上野:だいたい倍音というのは巻き込む力があるから、引きずられていきますね。チベタンベルであるとか、クリスタルボウルであるとか、ホーミーとか。聞いているうちにずるずるっと意識が引きずり込まれるよね。

鈴木:その中で風のメッセージであるとか、自然界の色々なものと一体となってゆくんですね。いいですよね。人間至上主義になってしまったのはアングロサクソンの文化ですね。

山下:先生の本の中で、実際に心霊治療のあれで、人の体を触ったときに色々なものを取り出して、あれも書かれてましたけど、不思議でしょうがないんですけど。手からしゅろしゅろっと出てくる?

上野:こんな風に、こんなことをやっているうちに、おおみたいな感じに手をだすと、そうするとちゃんとここに釘だとか金箔だとか色んなものが(笑)。それでここ(傷口)は塞がっているわけ。瞬時に。普通は手品師がよくやるじゃないですか、どっかに隠し持っているとか。だから疑ってじーっと見てるんだけど、やっている人は腕をまくっているし、隠すものは何もないわけなのね。だから素直に出てきたとしか、見えないわけですよね。

山下:私はサイババの映像を見たときに、ここまでの服を着ていたので…(笑)

上野:そうだねえ。サイババはちょっとねえ。腕まくりしてほしいよねえ(笑)そうじゃないんだよ。治療だから。その人はムームーみたいなものを着てて。袖無しの着てるから、隠すものはなにもないし。だいたい手品をやっているわけじゃないからね。場そのものが。待っている人もなんとかして治してもらおうという、問題を抱えている人が順番をまっているわけで。次から次とね。

鈴木:やはりあれですよね。現世だけ、物質だけにとらわれないで医療を行うというとそういう形態になりますよね。例えばその辺に落ちていそうなさびたナイフで傷をつけて体の中を開いて、ほじくったとしてもあまり血も出ないし傷も残らないとか、可能ですよねえ。

上野:そうですね。現にそういう人達が世界中のあちこちにいるんですからね。

鈴木:先ほどの統合医療の推進プロジェクトっていうのは、鳩山首相が以前歯科治療の際にリフレクソロジーを受けて麻酔をしないでも痛みがなかったという事が原体験となって立ち上がったらしいですね。

宮崎:もともとリフレクソロジーの始まりは、麻酔のない時代に患者さんがベッドに体を押し付けたのが発見だったそうですよ。

上野:へえ、そうなんだ。

宮崎:はい。麻酔がないときに耳鼻科医が発見したんです。

上野:まあ、鳩山さんファミリーっていうのは昔からそういうのが好きで、西洋医学は最後の手段という感じで、あんまり信用してないみたいですねえ。もう10年以上前だけど、CAMUnetを立ち上げたときに鳩山さんに会った事があるんですけど、彼は面白いことを言っていて、「君たちがやっていることは代替医療っていっているけれども本当は西洋医学が代替医療であり、君たちがやっているもののまとまったものが医療なんだよ」と言ってて、この人わかってるな、と思ったね。もう一つ感心したのは「それを推進するのはとてもいいことだけれども医師会のものすごい反対があるから、医師会と徹底的に戦うという腰を据えないとだめだ。私は戦いますよ」と。相当わかってんだろうなあ、と思ってね。

鈴木:すごいですね。一国の総理の言葉っていうのは重たいですね。

上野:総理になるずっと前だからさ。

鈴木:アメリカの統合医療の現状というのはどういう感じですか?

上野:僕もそれほどリサーチしているわけではないんだけれども、認知度はかなり高くなってきているんじゃないですかね。ただそれをプロバイダーというか、提供する側が追いついていないという印象を受けましたね。さっきも言いましたけど、統合医療のモデルがないんですよ、まだ。看板を掲げて吹聴している人はいますけれども、それは、その人の統合医療。その人の思い込んだ統合医療であって、それ以上ではない。だから実際に、日本の場合、西洋医学と東洋医学が統合すると思い込んでいる医者がいるとすれば、それはそれでもう、そういう姿があるかもしれないから。統合医療の中のごく、一部、というか。ちょっと物足りない統合医療というか…。

鈴木:もともと僕が生まれ育ったところにいらした、我が家のホームドクターだった先生は、小児科、内科、外科の先生だったんですが、鍼を打ってくれましたし、漢方薬を子供の時から出してくれましたね。

上野:そういう人いましたよね。

鈴木:元来日本では統合医療をやっていた医師の方というのは普遍的にいたのではないかと思います。

上野:いましたね。

鈴木:代替医療というのも、ごく普通に一般的な療法として生活の中に入り込んでいましたよね。

上野:代替医療という言葉はなかったけどね。

鈴木:ですから改めて、代替療法、代替医療、統合医療というものをどのように推進してゆくかっていう話もなんなんだろうかと。
面白い話で今の若い子が、「うちの近くのお蕎麦屋さんてすごいんだよ!」「どうしたの」っていうと「デリバリーしてくれんだよ!」という(笑)。もともと「出前」というものがあってね、と。それと、同じようなことなんじゃないかな、と思うんですよね。日本において統合医療はさほど目新しいものではないんじゃないかと私は思うんですね。

上野:その通りですね。決して目新しいものではないです。特に伝統的なものが残っている地域においてはね。伝統と早くから切れてしまった東京のようなところでは目新しく感じる。看板を掲げるとなんとなく目新しい感じがしちゃうという傾向があるかもしれない。今更、というものですよね。それは西洋においても同じだと思うんですよね。先に伝統を捨てた時期が早かっただけであって、完全に100%現代医学なのか、というとそうではなくて、周辺にはずっと残っていたわけですよね。だからこそそれが復活した。跡形もなく消えたわけじゃない。

鈴木:ヨーロッパの代替医療の事情と、アメリカの事情が一番違うっていうのは、現存して残しているテキストみたいなものが違うっていうことでしょうか。

上野:そうですよね。ドイツなんか、相当残しましたよね。あれは意識的に残したんだと思うね。

鈴木:もっともっと歴史的に時代をずっとさかのぼっていって、ローマ帝国がヨーロッパを支配する前は、もっとたくさんの個別の神様がいたし、もっと個別の医療もあったと思うんですけれども、それをローマが支配することによってたくさんの神様が壊されましたよね? そのような政情下とキリスト教という一神教の下で、ハーブを始めいろいろな代替療法や神様達が命からがらと現代まで生きていたんだなど感じるんですね。ケルトなんて跡形が一番残ってるんじゃないかな、と思うんです。ケルトの渦巻きっていうのは、日本の神道なんかと近いですよね。八百万にしてもそうですね。心動かされますね。

上野:そこがすごい所ですよね。つぶれなかったところが。細々とでもね。とにかく世代を超えて語り継がれてきた、あるいは技術が伝承されてきたってところがすごいですね。
前も話したかな、「チャングムの誓い」の話ってしたっけ?

鈴木:いえ。

上野:僕はけっこう「チャングムの誓い」ファンで見ていたんですけども、チャングムは女医の学習を始めて、先輩から食事療法から鍼灸から教わるわけなんだけど、その鍼灸の教育内容を見て非常に驚いたんだけど、自分が四谷の学校で受けた教育と全く瓜二つだったんだよ。えー!ここまで同じか、というくらい。もちろん理論も同じだし、針の使い方、指先の形、動かし方まで全く同じで、これはすごいな。と。中国の文化が東アジア一帯に伝わって朝鮮から日本に伝わって。中国でかなり廃れていることが、日本とか韓国ではまだ残っているという、まあそれは良くある事ですが、それが全く同じであるというのが驚きですね。実際に僕らがやっているのと同じようにチャングムがやっているという。それは4、500年前の話だそうですけれども。

鈴木:本当に同根なんですね。

上野:うん。本当に同根。そういうアートっていうのは本当に不思議なものですね。保存されるものですね。あれには驚いたな。

宮崎:面白かったですね。出てくる書物も実際に今残っているものが出てくるので、診断の方法とかも、「あ、こういう理由なんだ」とか納得できるので、すごい面白かったです。

上野:勉強になるよね。

宮崎:最初料理人なんですけど、一回干されて、医者を目指して、王様のお抱えの医者になるという。

鈴木:なるほどね。アーユルベーダーでもそうらしいけど、一番最初に勉強するのは料理なんですってね。厨房に入る。医食同源だと思うのですが、何を食べているのかというのは体を考えて行く上で本当に基本ですよね。そういう色々な根っこの部分で、確かにそうだなあ、と思って、いざここから東京に帰って周りに目を移してみると、目を覆いたくなるような惨状というのがありまして。子供の頃に食べていたものを一生涯食べ続けるというマクドナルドの戦略にまんまとハマり、家族全員でマックに行くとか…。そしてお母さん達が腰が痛くて、もしくは腱鞘炎で子供をだっこすることが難しいという方が何人もいらして。子育てができなくなるというのは、生物の種として衰弱にむかっている訳ですね。そういう社会で生活していて、じゃあ私達、自然手技療法家は何をどのように行っていけばいいのか、というのが日々考えさせられることなんですよね。

上野:自分の赤ちゃんを抱いていることがつらいわけ? 重くて?

鈴木:えぇ。腰を痛めてしまって、あるいは腱鞘炎になってしまって、首が動かなくてだっこできない。

上野:無理があるからじゃないの?抱き方というか。

鈴木:それよりも基礎体力が無さ過ぎる、肉体が脆弱すぎるというのがまずあると思いますね。そこに拍車を掛けるように、おばあちゃんが子育てに参加するわけですよ。

上野:それはわかるな。楽しいもんだからね。

鈴木:はい。でもそうなるとお母さんが育児というものをおろそかにしてしまう。それも問題です。

上野:絆が薄くなってしまうよね。さっき鈴木さんが言った「食・息・動・想・環境」これは、瓜生良介さんが昔言い始めたことだと思うんだけど。

鈴木:もともとは橋本敬三先生が…。

上野:敬三先生の説に「環」をつけたのは瓜生さんなんだよね。で僕は「環」も大事だけど「はん」を選んだんだけど。

鈴木:はんというのは?

上野:絆のこと。絆を広げていけば環境になるというか。環境は確かに決定的に大事なんだけど。絆っていうのは案外言われてないだけに、強調するために入れておいたほうがいいかなと。これはワイルさんの受け売りなんだけども。意外に絆の部分がないがしろにされているために、色んな問題が起こっている。

鈴木:そうですね。例えば地域社会というかコミュニティーが崩壊してしまっていて、昔は地域が子供を育てるなんていうことがありましたよね。隣のおばさんに叩かれたとか。今だと訴訟になってしまいますが。戦後のコミュニティーというか、会社が担っていた終身雇用というのが崩壊してしまって、何にたよったらいいのか、どこに身をおいたらいいのか。家庭も崩壊してしまっているし…。絆、たしかにそうですね。人間が心身ともにリラックスして健康であることがこれほど大変な時代はないんじゃないかな、という気がしますねえ。

上野:でも普通に当たり前に暮らしていれば何の問題もないようにできているはずなんだよね、生き物というのは。なぜ僕が「はん=絆」というのを強調しておいたほうがいいかなと思うのは、コミュニティーにしても、例えばアメリカ、ニューヨークという街の中でも、それぞれの人種が別れて住んでいるじゃないですか。一番健康度が高いのはイタリア人。食い物がいいし、酒もがんがん飲んで、煙草も吸うんだけども。あと中国人。イタリア人と中国人が一番家族と地域のつながりが強い。一人暮らしが少ないというはっきりしたデータがある。一方アングロサクソン系は大家族が少ない。核家族、一人暮らしも多いし。ヘルス指向とかなんとか言いながらも色んな病気に悩まされている。こっちは健康なんて考えないで、昔ながらの生活を楽しくわいわいやっているけれどもコレステロール値なんか調べると明らかに健康であると。そういう調査を見ると、想像以上に絆の力の強さを感じるんですよね。これを健康の条件に入れるのはいいんじゃないかなと。

鈴木:長寿社会、沖縄なんかもそうですけど、みんなで歌って踊ってていう共通項がありますよね。

上野:ワイルさんが注目しているのも沖縄ですよね。沖縄に何度も行っている。長寿国の研究。やっぱり同じ事言ってますね。年寄りがすごく大切にされている。沖縄では兄弟が何人もいた場合に、誰が親の面倒をみるかでけんかをする。東京では逆に、誰が見ないかでけんかをするっていう。まったく違う動機でけんかをするらしいね。

鈴木:それはすごいですね。

上野:すごいですよね。お年寄りが元気なわけですよね。やっぱり簡単明瞭。食生活とか色々あるけれども、重要な条件は絆。

宮崎:子供とお年寄りの交流というのが、すごいお互いにメリットがありますよね。

上野:みたいですね。最近注目されていますね。

宮崎:以前いたボランティアで、デイケアの施設と保育園が同じ場所に併設してあって、お互いに交流してるんですよ。すごいお年寄りの方も交流を楽しみにして、活き活きしてますし、お子さんも、お年寄りに接することで優しい心が身に付くという、相乗効果があるみたいです。

上野:『崖の上のポニョ』もそうだもんね。

宮崎:そうなんですか~。そういう施設が増えれば、考え方も変わってくるのかなあ、って。

上野:本当、そうだね。もともと大家族というのはそういうもんだったわけですから。

宮崎:大家族が社会的に無理であれば、そういう施設ができればいいですよね。

上野:ポニョの主人公はそういう子供の一人なんです。

山下:イタリア人が健康っていうのはすごく面白いですね。

上野:面白いです。つまり、健康、健康と言っている人はろくでもない人だと僕は言っているのね。

鈴木:意識しないっていうのが、健康なんですよね。健康とは…って考えてしまうのは病んでますよね。

上野:おかしいですよ。中国人とイタリア人は健康ですよ。あんまり言わないから。

鈴木:先程も話していたのですが、中国人は海外に出てきても、どこにいても家族、民族で固まる。でも日本人は海外に出て行くと、必ず日本人を避ける。個でつながりをさける。

上野:そうね。本当にそう。昔からそうだったのかなあ。そのへんが疑問だよな。どうしてそうなっちゃったんだろう。

鈴木:以前、上野さんにお伺いした、お友達のカメラマンとアイヌのシャーマンの方。青木愛子さん、という方じゃないですか?

上野:そうですね。

鈴木:偶然本を読みまして。

上野:お産婆さんの?

鈴木:そうです。アイヌの産婆学みたいな。あれはすごいと思いましたね。

上野:あれなんか、最もわかりやすいというか、なんの病気であれ医者に見捨てられた人はまず、大地に直接横たわり、動物と同じ生活をしろという。土の上で寝て、川で顔を洗って…、そういういわば原始にかえって細胞に思い出させるというね、最もクリエイティブでラジカルな治療法ですよね。
僕が親しかった伊藤真愚という、鍼灸の先生がいました。このかたは癌で亡くなったんですが、知り合いの帯津敬三病院に入っていたんですが、ベッドに寝てないで病院の片隅の土の上で寝てるわけ(笑)。そういう人もいましたよ。

山下:全然話は変わるんですけど、先生はバリのシャーマンに弟子入りを勧められてましたよね。

上野:そういうこともあったねえ。あのシャーマンも気の毒でしたね。若い人が全然興味を持たない訳ですよ。自分がやっていることにね。バイクだなんだって西洋文明に興味持ってて。それで病気になると西洋医学の病院に行っちゃうわけですよ。非常に寂しいわけね。それでわざわざ日本から来て、自分のやっていることにそんなに興味があるんだったら弟子になれ、と。

山下:悩まれましたか?

上野:一瞬ね(笑) うーん、と。最初にジャングルの中で何十日も過ごせって言われて引きましたけど。

宮崎:そういう経験をしないとシャーマンにはなれないんですね。

上野:それはもう大前提。一人で裸になってジャングルで暮らして、そこからかえってきたら教える、みたいな。

鈴木:細胞力強化でしょうね。

山下:テストも?

上野:うん。それは氣の感覚テストで、それは合格したんですけど。

宮崎:どんなテストだったんですか

上野:目をつむって、先生が手を動かすから、先生の手がどこにあるかを言えっていう。そんなに難しくないですよ。ちゃんと心を鎮めていればわかるというか。それが一番簡単なテストで、これができなければ誘うまいと思ってたでしょうね。

宮崎:熱心で見込みがあったから

上野:熱心は熱心でしたね。

鈴木:名著『癒す心、治る力』でワイル博士が色々なシャーマンを南米のほうに探し歩いて、合点がいかないかな?と言っているときに、自分の家のすぐ裏のフルフォード博士に出会い、なんなんだこれは?っていうのがありましたね。

上野:それはガイアシンフォニー七番にも出てきますよ。わはは、って笑ってね。

鈴木:楽しみだな。フルフォード博士はすごかったんでしょうね。

上野:すごかったです。もう、あんな人会った事ないです。

鈴木:彼はヒーラーなんでしょうね。

上野:ヒーラーの中のヒーラーでした。

鈴木:オステオパシーの創始者アンドルー・テイラー・スティル博士、そしてスティル博士の一番弟子ともいえるサザーランド博士。彼らは医療者としても卓越していたけれども、共に敬虔なクリスチャンなんですよね。その治療形態はアートとしての技術が半分、あとの半分は「祈り」が診療の中で大きな割合を占めていたというのを読んで、そうだったのか、と深く感銘を受けたのを覚えています。
彼らが感じ「動き出せ!」と念じた治癒力、医療者としての想い。手技者としての技術と50%の祈り。そこに医療者としての本来のあるべき姿を感じて身が震える思いと言うか、染み入りましたね。フルフォード博士もやっぱり意志の力、意識の力というのを活用されていたんでしょうね。

上野:僕が一番驚いたのは、手ですね。あんな手は見た事がない。大きいし、ふわふわにやわらかいし、先細りなんですよね。先端が細ーくなっている。それでふわーっとしてる。あんまり力仕事をしてなくって、ひたすら、「手の感覚トレーニング」ばっかりやってたんでしょうね。

鈴木:僕は恥ずかしいけど、わからない。あれは気でわかるんでしょうね。

宮崎:あの、フルフォード博士はハンマーを使われるって?

上野:うん。歳とってからはね。

宮崎:ハンマーを通して伝わってくるものがわかるってことですよね。

鈴木:ハンマーってバイブレーターですか?

上野:そうです。うん。僕がやってもらったときもそうでした。たまたま五十肩がおこってたんで、これ幸いとやってもらったんですけど。あっという間に治りましたね。それまで試しに色んな治療法をやってたんですよね。大抵はそのときはいいけどまたすぐに戻るっていう感じだったんですけど、フルフォードの治療では、帰りの飛行機の中ですっかり忘れている事に気付きましたね。

宮崎:本のタイトルもいいですよね。あの、『いのちの輝き』って。

鈴木:フルフォード博士は『サトル・オステオパシー』っていう本がありましたよね。あれは翻訳がひどくて…。

上野:ひどいよね。

鈴木:翻訳ソフトにかけたみたいな。あの本は上野さんが訳されたら名著になったんじゃないかな、と思ったんですけど。あそこにも書いてあるやっとオステオパシー学会でも功績が認められて晩年に学会に招待されたまではよかったが、「三色の光と水晶で…」とはじまって、周りの研究者達は結局最後迄ついてゆけなかったという。最高だな!と思いました。矢山利彦先生が黄色と青と赤かなんかの光で治療しているみたいですね。

上野:あの人はかわりもんだからね。

鈴木:ご面識は?

上野:ありますよ。

鈴木:宮崎さんも本読んできたんだよね。

上野:リフレクソロジーのことお詳しいみたいだけど、どこで勉強してきたんですか?

宮崎:日本のリフレクソロジー専門学校で勉強してきました。もともとそこから始まって、それで足だけではものたりなくなって、整体を鈴木先生のところで勉強させて頂くようになったんです。

上野:さっきの話初めて聞きました。あの、外科医がリフレクソロジーをっていう。

宮崎:はい。今のリフレクソロジーはアメリカのフィッツバーグ博士という方が発見しました。1900年ぐらいの話なんですけども、その当時は麻酔がないので、手術をするときは痛みを耐えていた患者さんが、ベッドとか柵とかに体を押し付けていて、何かその、手とか足とかにつぼみたいなものがあるんじゃないか、と研究を初めて反射区を見つけられたそうなんですよ。

鈴木:その反射区は、東洋で言っている反射区とほぼ同じなのかな?

宮崎:そうですね。やっぱり多少の違いはあるんですけど、かなり、一緒ですね。

上野:原理は一緒だよね。はー、そうか。すごく納得できる。痛みを耐えるために体をぐうっと緊張させて気を散らすという効果もあると思うけど、そっちに意識を持っていくことで痛みを減らすというか。誰もが無意識にやっていることだよね。

鈴木:体系化できるっていうのがすごいよね。

宮崎:そうですね。私も風邪ひいたときなんかは、鼻づまりとかとってましたね。

上野:針でも足の裏とか、昔からあるんだけど、中国ではあんまり細かい領域を研究するっていうほうには行ってないのね。かなりアバウト。だいたいで満足しちゃうというか。なんでもそうだけど、細かくやるのは西洋人だよね。

鈴木:耳にうつ鍼がありますよね。あれも細分化したのは西洋人ですか?

上野:あれはノジェというフランス人だよね。

山下:また、LSDの話に戻っちゃうんですけど、植物が水を吸っているのがわかるっていうのが。それ以外、別の方法とかでそういうのを認識されたことは?

上野:例えばホロトロピックブリージングっていう呼吸法であれと全く同じ経験をしたことがある。同じだっていう話は前から聞いてたので、驚きはしなかったんですが。

山下:そのときメッセージとかっていうのは?

上野:うん、特別なメッセージっていうのはないけど、ビジョンはありましたね。やったのがアメリカのつまんない街なんですよ、すごい田舎で。やっている最中にその場所の昔の光景が見えてきたわけ。すごい光景が。森で。それであとから聞いたらそうだっていうんで。そういう事はありますね。そういうのは別に特別な経験ではないみたい。日本の有名な建築家でそういう人がいますよね。そういうセンスがある人みたいだけど、頼まれてその場所にいくと太古の景色がありありと見えてくる瞬間があるんだと、そこから建築物を作ってゆくっていう。その場が持っているエネルギーが残存しているっていうか。

鈴木:時空とか認識っていうのは、本当に面白いですね。

上野:本当に面白い。

鈴木:私は犬を二匹飼っているんですが、いつも思いますが犬達は非言語でものすごいコミュニケーションしますよね。

上野:そうですね。それも素早いよね。判断も正しいし。

鈴木:別に犬同士がアイコンタクトをとっているわけでもないんですよね。不思議だよな。思った瞬間にこう~、わかっちゃうんですよね。

上野:だからLSD状態の時には、それがもう同調できるわけなんだよね。自分も犬の仲間になれるっていうか。その状態を思い出すことは可能なんだよ。薬の力を借りなくても。サザーランドじゃないけど、そういうことやっているヒーラーみたいな人は、たいがいそれをやってますよ。ワイルさんだって毎朝4、50分の瞑想をどんなに忙しくても欠かさない。世界中どこ行ってる時でも。完全に一日の中のプログラムに入ってて。それがないと何も始まらないみたいな。僕は何回かつきあったことがありますが、座るだけですよね。まあ、座禅ですね。静かに座っているだけなんだけど。それを4、50分やってから、一日を始める。彼の習慣なんですよね。それが彼を作り上げているものになっているんじゃないですかね。何十年来の習慣らしいから。何かチューニングをするんですかね。

鈴木:そうでしょうね。瞑想だとか祈りっていうのは、すごく細かい身体技法だと思いますね。私たちの肉体と精神と魂の三部構造をチューニングする為に、やはり必要なんでしょうね。

上野:そうなんでしょうね。犬や猫なんか、ぐーっと伸びをするときにそれをやっているんじゃないですか。一瞬のうちに

鈴木:そうかもしれませんね。

上野:動物とか、植物が身近にあればそこから学ぶことは大きいですね。よけいな情報はいらなくなりますよ。

鈴木:畑なんて、自分でやって耕して育ってくると、生命というものに対して感受性がちがってくるでしょうね…。

上野:大きなことはいえないけれど、感受性は高まりますよ。去年はさんざんでね。非常に暑かったんですよ。スズメバチが大量にやってきて、近くの森に巣を作って。家の敷地の中にできた巣は駆除してもらったんだけど、森の中のは無理で。近所のおじさんが死んじゃったんですよ。自宅にこんなにでかい巣ができて、業者に頼めばいいのに、自分で駆除しようとして5、60匹にさされてあっという間に。数時間後に死んじゃったんですよ。すごいもんですよ。病院に行ってもやることないのね。ただ冷やして痛み止めうつぐらいで。

宮崎:そういう時に代替医療は…?

上野:どうですかねえ。いいのがあればいいけど。今年は出ないといいなあ、と思ってるんですけど。畑なんか出られないですからね。ぶんぶん飛んでて。怖いですよ。すごいアグレッシブなんですよ。夏なんか窓あけてると中に入ってくるし。きっと雨の降らない家の中に巣を作りたいんでしょうねえ…。天敵がいないですからね。

山下:消防に電話すると、消防士がきてくれますよ。本当はいやなんですけど。

上野:業者っていうのは、近くで養蜂をやっている人でね、その人が来てくれたんだけど、けっこう気楽な格好でくるのね。半ズボンとか。

山下:燃やして、煙で殺しますよね。

上野:このへんのホームセンターに行くと、一番いいところにスズメバチ退治のスプレーが並んでますよ。それが高いんですよ。

宮崎:最近ハチがいなくなって…

鈴木:それはミツバチでしょ

宮崎:違うんですね。関係ないんですね(笑)

鈴木:スズメバチが多くなると、ミツバチがいなくなる。

上野:ミツバチは確かに激減しているらしいね。

鈴木:あれで地球の危機を唱えている人もいますね。あれはなんでなの?

宮崎:わかんない。

鈴木:突然いなくなっちゃうの?

宮崎:そうすると植物も…。子供の出産数が増えるのもマヤ暦が終わるのを見届けるためとか、そういうなんか、色んな話が出てきますよね。ほんとかどうかわかりませんけど。

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鈴木:今度の『ガイアシンフォニー』楽しみですね。

上野:そうだね。今度も楽しいのができるんじゃないかな。5月1日は明治神宮、2日は伊勢神宮で試写会です。ワイルさんがくるでしょ。連休のさなかだから動くのが大変だけど。

鈴木:1日はお休みだった?

宮崎:平日だったかもしれません。

上野:まあ、関係者試写会というか、奉納というか。そういう気持ちがあるんですかね。それで、一般の公開は7月に写真美術館で一ヶ月ぐらいやるみたい。

山下:先生の本に書かれていたんですけども、テレビのお仕事をされていたんですよね?

上野:僕がフジテレビにいた時に龍村さんもNHKにいて、お互いに全然知らなかったんだけどさ。ほぼ同時期にやめてフリーになって。それはずっと後になってわかったんだけど。それでしゃべってるうちに二人とも同じ街で同じ日に生まれたってことがわかったんだよ。

鈴木:そういえばそれ、前何かで、なんか読んだか、伺ったか…。

上野:話したかもしれないね。非常に縁の深い人なんですよ。

山下:アメリカに行かれたときに、胃腸薬も持って行かれたけど、アメリカに行かれて以降飲んでない、というのがすごくいい話で

上野:そうそう。それまでは毎日飲んでいて。飲まないではいられない感じだったんだけどね。
転地療法って昔からいうけどね。本当に環境が変わったらころっと治っちゃうっていうのも多いんだよね。

宮崎:先生の著作「補完代替医療入門」の中に、「代替療法の学校、大学とかができたらいい」と書かれていたんですが、ちょうど私達は今それを目指していこうと…。

鈴木:4年前にアロマと整体の学校で始めたのですが、どうせやるなら社会に対してきちんとした代替療法の学院を作ろうと昨年「スクールオブ・アロマーティカ」から「自然手技療法学院」と改名しまして、カリキュラムも半年間だったのですが一年間のカリキュラムが組めるようになりました。この先一年半、そして2年制のカレッジのような感じのものを目指して行こうと思っております。出来れば学校法人を取得し、きちんとした教育機関を目指して行きたいと思っています。

上野:いいですね。

鈴木:どこまでいけるかわからないですが、大学レベルの代替療法の学校まで進化できたらなんてことを考えております。

上野:それはいいですね。

鈴木:卒業生や仲間達が集まってくれる「自然手技療法協会」というものがあるのですが、今それを一般社団法人化しようとしています。日本で代替療法を学ぼうと思うとアメリカに行ったり、オーストラリアに行ったりとするわけですけれども、日本できちんとした代替療法が学べる場所にならなければ行けないと思っています。

上野:いずれできないといけないですよね。年に1回か2回教えに行っている東中野にあるリフレクソロジーの学校があって...

鈴木:あの、ぜひうちの学校にも教えていらして…

上野:教えに行くのはもうめんどくさいからやらないんだけど(笑)、何かお手伝いを。

鈴木:いやあ、ぜひ。ありがとうございます。

上野:教えに行くのって実は大変なんですよ。2時間か3時間のためにまる一日費やすわけですから。でもやっぱり、そういうものは必要だし、それに併設されたクリニックとか、地域の人が受けられるような施設がついているようなところがあるといいよね。それが一つのモデルになって他の地域に飛び火していけばいいしね。まあ、そういう事をやるにしても、顧問とかにしっかりしたお医者さんがいたほうがいいし。さっき言った山本さんとかね。そういう人とつながっていくといい方向に行くと思うし。山本さんたちは今度初めて10人が集まって、三重県の統合医療バレーに参加します。もともとある薬草の伝統を掘り起こすとかも含めて、三重県の大学と、製薬会社と県が一緒になって統合医療の特区をつくろうとしてるよね。今早稲田の教授になっている前の三重県知事がいるじゃないですか?その人の発案でやりだして、それで、顧問にアンドルー・ワイルを捕まえてきて、ワイルも一応、2回ぐらいきて、一応見て。いいよとは言ったけど、忙しくて実際にはできないわけですよ。だから弟子の10人にお前達にやれ、と最近言ったらしい。それで10人は初めて三重に行って、知事から話を伺って、スタート地点についたという、そういう時期らしい。おもしろい。
さっきの鳩山さんの話、国会レベルで論議されているのは、すごくレベルの低い話っていうかあの、お題目だけで実態が伴わない。三重県は一応実態が伴うものらしいから。まあ、そういうのは県のほうがうまく行くからね。国レベルだと難しいから。県で一つモデルを作ったほうが、県知事の権限が大きいし、可能性はあるかもしれないですね。ワイルさんを持ってきたところなんてさすがですよね。うちにも来たんですよ、その三重県の人が。

鈴木:そうなんですか。

上野:僕はめんどくさいから、はあ、はあと生返事してたんだけど(笑)。関わりだすと大変じゃないですか。でもワイルがついてるんならいいなと思って、応援しようと思うんですけど。そういう流れとどっかでつながりながら、東京なら東京で、という活動のほうがいいんじゃないかな、という気がするけど。山本さんにメールなりなんなりして、一度遊びに行ったら?彼のメールを、さしあげます。あとでメールで知らせます。

鈴木:ありがとうございます。
今でも、その10人以外にも、日本からワイル博士のプログラムに行かれているんですか?

上野:今現在行っている人もいるみたいですよ。不思議なことにね、ワイルは最初から統合医療は女医さんのほうが向いてるって言ってて。実際にアリゾナに来る人の割合も6:4ぐらいで女医のほう多い。日本でもそんな感じ。

鈴木:それは日本に限らずという。

上野:うん。本来医療がシステムされる以前は女性が担っていた動きがあって、それを復活させようという野心もあるみたい。

鈴木:本来女性が持っている母性というものが、治癒力を起こすというあれですよね。

上野:頭ばっかりの、秀才の記憶力がいいだけの医者ばかりだとおかしくなる。
鈴木:女性のほうが向いている?

上野:うん。

山下:じゃあ、うちの学校が女性のほうが多いというのはいい傾向なんですね。

鈴木:それは…そうかもね。

上野:代替医療の世界ではそうだよね。メジャーの現代医学の中でもそうなりつつあるところがすごい事です。まあ、現代医療の中ではまだまだ代替医療というのはマイナーな世界で、巨大なアリゾナ大学の建物の中のちっちゃな場所ですけど、それができたっていうのはすごい事だね。

鈴木:かれこれ15年くらい前のことだと思うんですけども、アメリカで国内線に乗ってたとき、機内誌でワイル博士がインタビューされていて、当時アリゾナの博士の診療所にくるクライアントで、自然療法で例えばハーブなんかの処方で満足して帰るのは3割、あとの7割の人は痛み止めや安定剤の処方を受けたがる。この7:3というのがキーワードなんじゃないかと。そこだけを覚えているんですけど。

上野:まあ、そういうことでしょうね。それが少しずつ逆転し始めたということなんだろうけど。逆転にはもう少し時間がかかるというか。

鈴木:一般的に統合医療というか、代替療法として一番メジャーになったのはカイロプラクティックですが...

上野:まあ、最初にね、ビジネス的にはそういうことですね。

鈴木:今カイロプラクティックの現状は?

上野:まあ、僕は詳しい事はしらないですけど、盛んだとか、だめになったという話はきかないけれど総体的にカイロ以外のものが補充されているから、総体的に影が薄くなっているというのはいなめないかな。まあ、ある意味じゃ健全化しているんじゃないですか。
ワイルさんもカイロに関しては手厳しくいっている面があるんですよね。安易にレントゲンを使いすぎるとか。だいたいカイロをやっている人は医療とか癒しというよりもビジネスが先に立っている人が多いとか。もちろんそうじゃない人もいるわけで。日本でも同じですよそれは。

鈴木:ホメオパシーというのはどうなんでしょう?日本でもホメオパシーが民間では盛んになってきてはいるんですけれども、あの医療体系というのは、医師が行う領域なんじゃないかな、と思います。

上野:そうみたいですね。欧米見ても、医者の資格を持っている人がやっているのが多いですよね。資格がなくてももちろんやってもいいんだけど、でもやっぱり日本の場合は特に、医師と獣医師というのは、扱う資格が前提というふうになりつつあるよね。

鈴木:帯津先生なんかはホメオパシーをよく使われますね。この前の講演で言われたのが、最後ご臨終のときに、すーっと向こうにいけるレメディがあるとか

上野:最近の関心事はそれだからね。なんか「月刊帯津」って言ってるんだけどさ、毎月単行本が送られてくるんだよ。一番新しいのは「全力往生」DVD付き。(笑)

山下:これ、宗教の本みたいですね。(笑)

鈴木:僕、この間ここにお伺いしてお話を伺ったときに、どのようにして人間は最後死んでゆくんだろう、というのをきちんと見極めていかないとその対比として生というのが明確に浮き彫りになってゆかないと事を学ばせていただいて、僕の中ではそのときにあぁ~そうかと腑に落ちたんですけども、どうも年齢のせいかやっぱり死というものに関して身近に感じられないというか、どうしてもなんかこう、うまくいけないですね。

上野:そのうち行けますよ(笑)

鈴木:これは時代かもしれないですけれども野口晴哉先生は常にものすごく死というものに向き合って整体というのをなさっている。彼が一番最初にそれを始めたのが関東大震災の時。周りでみんながばたばた亡くなって、そして第二次世界大戦があり、空襲があり、そのような状況で周りで次々に人が死んでゆくなかで、医療がなく、無医村の中で行っていた技術、であるからこそ、そこには鬼気迫るものがあるんだろう、と思うんですよね。改めて、ああ、これが人間と真剣に向き合うということなのか、と20年前に野口整体を学び始めた時に感じていた他の手技療法との際立った差異を、前回上野さんのお話を伺う中ではっきりと認識出来ました。

上野:まあ原点だろうね。でもね、帯津先生みたいに東大の医学部を出て、しっかりとしたキャリアを積んだ人が死後の世界は絶対あるとかさ、そういうのを確信犯的に言うと、ある種とても安心できるというかさ。そこまで先生が言うんだったらやっぱりそうかな、と思ってくれる人が増えていいと思うんですよ。そういう死後の世界とか、死んだらブラックアウトして虚無だという考えから先につないでゆく、ということから希望が生まれるわけだしさ、それがその人の病気を良くするかもしれないし、死に方もよくするかもしれないし。いずれにしても医者というのは本来、引導を渡すのも仕事のうちだったわけだし、確実に。

鈴木:例えば日本でも、お迎えが来る、死んだら迎えられてどっかに行く。魂の継続性ということですよね。それがブラックアウトで終わってしまうという…、こういうのはいつからでしょう?

上野:明治以降ですよね。近代化の産物ですよね。明治の人たちは西洋人と会う時、江戸の末期ぐらいから始まっていたとおもうけど、特に知識人であればあるほど、魂の再生とか死後の世界とか、ずっと信じてきた我々の世界をすごく恥じるという人が増えてきたんだね。その流れの中でそういう伝統が薄れかけてきた。でも薄れかけてきたけど消えはしないと。だからまたそういう人が出てきて軌道修正をしてくれる。

鈴木:本当に、捨て去るのが好きな民族ですよね。

上野:だから、いわゆる成功してきたわけでしょう?物質的に。

鈴木:でも大切なプライドだったり、尊敬だったり、そういった大事なものも捨ててしまいましたよね。

上野:でも捨てきれない。そういう動きにも目を配っておく必要がある。

鈴木:代替療法もその一つですよね。

上野:その一つととらえないと、見えてこない。

鈴木:青木愛子さんじゃないですけど、昔から脈々と伝わっている流れですよね。

上野:そうですよね。

鈴木:さきほどおっしゃっていた、三重県の熊野古道じゃないですけど、その辺にある薬草であるとか、そういう身近の薬学っていうのは面白そうですね。僕はすごく興味あるんですよ。

上野:すごい伝統があったらしいけどさ、どんどん製薬会社に買収されちゃったりしたみたいでさ。つぶれたりしてるらしいよね。

鈴木:古文書じゃないですけど、データーブックがあるわけですよね。

上野:でしょうね。そういうのをきちっと整理してゆこうというのも…。目のつけどころがさすがにいいな、と。

鈴木:うちの学校に入学にはいたらなかったんですけれども、真言宗のお寺の僧侶が代替療法をやりたい、と面接に来たんですよ。彼は子供の頃から真言宗の中で育ち、自分も修験道の勉強をして年に一回は三重県のどこそこの山々を14日間位飛び跳ねながらやるらしんですね、白装束で。これは楽しいだろうなあ~と。

上野:どうして代替療法を?

鈴木:先頃結婚しまして、奥様がすごくビジネスウーマンなんですよ。推測ですが、家にいるのが辛いのかなと。彼には檀家の人がついている。それを持って出て独自の代替療法を行っていきたい、ということらしいんですよ。多分奥さんがビジネスプロデュースをしてゆくんだと思うんですけども、あり方としては本来その僧侶が講話とともに実技として人様を癒す事が出来るっていうのは正しいあり方ですよね。

上野:だいたい加持祈祷っていうのは、真言宗の得意技じゃないですか。

鈴木:ですから護摩をたいたりするらしいですよ。

上野:すごいよね

山下:整体学校からお経が聞こえてきたらすごいですよね(笑)

鈴木:アメリカではワイル博士以外にも、代替療法でがんばっている先生というのは結構いらっしゃるんですか?

上野:沢山いますよ。各大学に数人くらいね。

鈴木:一流校から、三流校まで?

上野:そうだね。

鈴木:それは、西洋医学を基礎としてそこに各種療法を盛り込んで行くという感じですか?

上野:そう。

鈴木:日本でも遅かれ速かれ、医科大学がそういうことを始めてゆくんでしょうね。

上野:その芽はでてきているからね。色んな医科大学には、学部まではいかなくても研究会はあるみたいだし。

鈴木:ちょうど来週なんですが、東京女子医大の川嶋朗先生のセミナーを拝聴しに行く予定です。

上野:冷えとりの話ね。川嶋さんなんかもね、自分でやっぱり、ワイルさんの所じゃないけどもアメリカに勉強しに行って、それで帰ってから変わったっていうか、たんに自分の師匠、教授が言ってることをそのままやるんじゃなくて…。だいたい冷えなんていうのはいわゆる代替医療とか東洋医学の先生が大昔から言ってることであって珍しくないんだけど、医者が言うところが新しい(笑)。こういう人が出てくる必要があるわけですね。

鈴木:つくづく思うんですけれども、代替医療っていいですよね。本当にますますイイな~って、すごく思うんですよ。月に何度かいろいろなセミナーやるんですけれども、自分でしゃべりながら、これはやっぱり本当にいい!(笑) つくづくいいと思います。

上野:そういう人がやんないと。あの「映画っていいですね~」っていう人みたいね。

鈴木:どんどんその思いは強くなりますね。いいよね!

山下:その思いが強すぎて、どこに向かっているのか(笑)

宮崎:私も身を以て経験したので改めてそう思いますね。

鈴木:宮崎さんは花粉症治ったんだもんね。

宮崎:ほぼ、はい。病院でレーザー手術を2回うけてたんですけど、日常生活に支障が出るほどにひどい花粉症でした。もともと病院で働いていたので本当に無理矢理に薬を飲んで押さえている状態だったんですけど、そこからまずリフレクソロジーに入って、それから整体。食事とか、食・息・動・想・環境で全て見直して、薬を一切やめてから年々軽くなっていきました。今は体調が悪い時だけちょっと症状が出るかな、という程度にかなり改善しています。

上野:すばらしいね。

宮崎:そうですね。

鈴木:彼女は一期生なんですけど、入学時とは全然違うよね。

上野:やっぱり自らの経験から言えれば、すごく説得力があって、仕事に活かせるからいいよね。

宮崎:そうですね。自分ももっと健康になりたいな、という気持ちになりますし、他の人にもこれを経験してもらいたいな、という気持ちになりますよね。

上野:それはいいけど、さっきも言ったけど、あまり健康、健康ばっかり言っているとろくでもないやつになりますから…注意して。

宮崎:はい(笑)

鈴木:僕はいつも健康のこと考えてばっかりで(笑)

宮崎:私は根がそんなにまじめじゃないんで、たまに考えている、という程度で…。

奥様:じゃあ食事も考えていらっしゃる?

宮崎:そうですね。甘いものが大好きなので、普段から甘いものを食べて、あっ、食べ過ぎたな、と思ったら鼻水をいっぱい出したりしてますね。体調が悪い時は控えたり、そんな感じで調整してますね。

上野:何かマクロビオティックとかをやっているとか?

宮崎:厳密なマクロビはしていません。

鈴木:基本的には学院の生徒達には入校時からすぐに体験してもらうことがありまして、断食とか、動物性タンパクの摂取を控えるとか、シュガーコントロール、カフェインやアルコール、添加物などを体に入れない。そしてマクロビではないんですけども精白している炭水化物などを摂らないことなどを徹底してある期間行ってもらって、自分の体と精神が食べ物によりどのように変化して行くのか体験してもらっています。人間は犬歯を持って生まれて来ているし、五味の中に「甘味」もある訳ですからこのような食事形態はアンバランスなのですが、いざ「病気になった時の食事」というイレギュラーな事態をを考えると、この様にした方がいいというものが考え方の根底にありまして、入学式の日から皆さんに早速やってもらいます。
その一月後にくらいに教室に僕がぽんと行って、あなたやってる、あなたやってない、あなたたまにやってる…、みたいなのが顔見るとすぐにわかるんですよ。これは隠せないんですね。

上野:1ヶ月でわかるの?

鈴木:だいたい2週間ぐらいで変化がでてきます。それで大概の人は自然と普通の生活にもどるんですが、僕は「添加物顔」って呼んでるんですけど、中にはジャンクフードや添加物なんかを日常的に採っている子がいて、そうするとさっきの隈取りじゃないですけど、添加物が溜まるラインというのがあるんです。食べ物で顔の相がこんなにも変わるものなんだな、というのを生徒達をみていて感じます。

上野:やっぱり出るよね。そういうのね。

鈴木:僕たちの基本理念の一つとして、自らの「食・息・動・想・環境」を最高レベルで整えて行こう。自らが細胞レベルで元気になり、その上でクライアントさん達と向き合おう、というふうに考えているんですよね。

上野:それは正しいよね。

鈴木:「食・息・動・想・環境」って人間の一番根源的な営みなんですが、それを継続的に整え続けるっていうのは、いざやってみると至難の業なんですね。まるで修行の様でほぼ無理に等しいです。いざ病気になってしまったり、癌になってしまった時には真剣に向き合えるのに普通に生活している時に同じように出来るかというと出来ない。でもそれが人間なんだなぁと思います。

上野:そうだね。基本だよね。
生徒さんていうのは年々増えている傾向なんですか?

鈴木:おかげさまで、徐々に増えています。業界自体が飽和状態というのもあり、私たちの力不足もあり急激に増えないのですが、学校自体の方向性が固まってゆくに比例して増えて来ていますね。

宮崎:だいぶ大きくなってきています。

鈴木:第一期の頃とはだいぶ違うよね。

宮崎:そうですね。

上野:何年前くらいなんですか?

宮崎:4年くらい前ですね。

上野:それはすごいね。リフレクソロジーの仕事を始める前は看護師さんだったの?

宮崎:いえ、医療事務です。総合病院で外来の受付をやっていたので本当に、3分診療の板挟みを毎日実感していたんですよ。

上野:だいたい病院っていうのは気の悪い人が多いからね。

宮崎:そうですね。いるだけで疲れてましたね。辞めて久々に行ったら私こんな所にずっといたんだ!とびっくりしました。これは病気になるわと思いましたね。

上野:あれをなんとかしなくちゃね。

宮崎:本当に。医療関係者に代替医療を取り入れてもらおうという前提で、元学校の講師の方でナースの方がいるんですけれども病院に取り入れようとしてかけあっている方がいるんですよ。で、いきなり患者さんに、というのは無理なので、まずは病院のスタッフが疲れているからそこからケアしましょう、ということでがんばっている人がいるんですよ。みんな疲れてますよね。医者もそうですし、看護師さんも全て含めて。

鈴木:お医者さんというのはもともと体力のある人が多いよね。

宮崎:でも、体力があってもあの食生活をしてたら無理だな、って思いますね。本当にひどい食生活してますよね。

上野:あれじゃあ、食事指導もできないよね。

鈴木:僕の施術所には医師や歯科医師の方が結構いらしていただいていますが、彼らは病気のプロフェッショナルですけれが、健康に関してはあまりにも無知ですね。

上野:その力がないんだもん。

鈴木:また「健康~」というと、不健康だと言われそうですが…(笑)

上野:彼女は(奥様)セラピストなんだけど、よく病院のスタッフなんかに教えたりしてる。

奥様:看護師さんとかね。若手の医者とかね。

上野:帯津先生のところに20年くらいいたんです。帯津先生がホリスティック医療について模索している時期に一緒にやっていた。

鈴木:そうなんですね! 医師会からの圧力とか、そういうのはありましたか?

奥様:やっぱり漢方とかは簡単には取り入れられなかったですね。帯津先生が自分で中国から持ってきてやってたとかね。最初は気功道場開いてもだれもこなくて。看護師さんと2、3人でやってたとかね。

宮崎:帯津先生の本に書いてありましたね。

奥様:でも患者さんは女性のほうが多いし、自分がやりたくて来る人が多いから、やっぱり女性のほうが目が明るいのかな。本能的に。

上野:本能だよ。

山下:その頃からこういった話をされていたんですか?

奥様:当時はまだ往生まではいっていない(笑)。奥様を一年くらい前に亡くされて。ただ、こういうのを読むとなんか死ぬのが怖くなくなるって。だから癌の患者さんで厳しい人なんかだと、怖くないから、もう大丈夫という感じがするからいいかもしれない。

上野:死ぬのが怖くなきゃ何も怖くないよ。

奥様:そうですよね。

鈴木:帯津先生がそこまで統合医療のほうに心血を注がれたっていうのはやっぱり限界を感じたんですか?

奥様:都立駒込病院で外科医をやってて、いくらやってもやってもね。戻ってくる患者とか。

上野:やっぱり自分が学んだ医学の限界だと思うね。それをどうやって乗り越えるかってことに。

山下:それで、病気だけと向き合うのではなく、生命と向き合うというほうに…。

上野:そうですね。学生時代からもともとそういう気功的な素地があったところに、そのあとホメオパシーであったり、西洋医学と三本柱っていう感じですかね。全部自分の実体験からきているので信頼できますよ。

鈴木:実体験というのは大切ですね。

奥様:かならずカツ丼がでてくるんですよね(笑)。みんなこれが出てくると食べたくなるっていう。先生が好きだったから。

上野:これ読んだことないでしょう?これ辻さんていう人と対談したやつ。持ってってください。

鈴木:ありがとうございます!

山下:雑誌にも出られてました。紹介を読みました。

鈴木:一番新しいやつですよね。アマゾンで見た気がする。

上野:川沿いの旅館でね。

奥様:東京に出てきてください、と言われても、いかな~いって(笑)

鈴木:そろそろ失礼させていただきます。今日は本当にありがとうございました。